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Japanische Klassiker mit Furigana

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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

平生元気のいい丈夫な老人ほどそういう場合には却て脆くぽっくり逝くものだとひそひそ話をしているのを耳にしたことがあった。

これは臼木が六十七歳の今日まで一度も思出したことのない遠い記憶である。長い間全く忘れ果てている事がどうして今夜突然思返されて来たのであろう。

それが訳もなく不思議に考えられるだけ、その身に取っては間違のない前兆のような気もする。もしそうだとすれば臼木自身もその父と同じように、そう長くは生残らないのかも知れない。

忰は自分より先に死んだ。娘は明日の朝遠く下ノ関へたって行く。たった一人になったその身にはもう思残すことは何もない。もし老父と同じようにその配偶者の一周忌さえ来ない中に死ぬることができたなら、それはどう考えても人生幸福の中の一つだと見なければなるまい。愚痴でもなければ、自分を欺く空威張でもなく、強いて粧う空元気でもない。ましてや戦後の世の中、代用食に折々飢を忍んでいる人達の言葉をきけば、無理に死ぬるわけにも行かないから、自然に死んでくれるのが何よりの仕合せだと言っているではないか。

臼木老人には戦争中に成人した男や女がさほど今の世の中を悲観していないように見えるのも、これまた不可思議の一つであった。