Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
「おばさん、どうかしたのかい。気分でもわりいかい。」
一向返事をしないので、耳でも遠いのか、それとも話をするのが面倒なのかも知れないと、おかみさんは一ツ残した握飯をせっせと口の中へ入れてしまい、沢庵漬をばりばり、指の先を嘗めて拭きながら、見れば婆さんはのめるように両膝の間に顔を突込み、大きな鼾をかいているので、年寄と子供ほど呑気なものはない。処嫌わず高鼾で昼寐をするとでも思ったらしく、
「おばさん。起きなよ。出かけるよ。」と言ったが一向起きる様子もないので、袋を背負い直して、もう一度、「じゃ先へ行きますよ。」
その時、婆さんの身体が前の方へのめったので、おかみさんは初て様子のおかしいのに心づき、後から抱き起すと、婆さんはもう目をつぶって口から泡を吹いている。
「おばさん。どうしたの。どうしたの。しっかりおし。」
婆さんの肩へ手をかけて揺ぶりながら耳に口をつけて呼んで見たが、返事はなく、手を放せばたわいなく倒れてしまうらしい。
あたりを見まわしても、目のとどくかぎり続いている葱と大根と菠薐草の畠には、小春の日かげの際限なくきらめき渡っているばかりで人影はなく、農家の屋根も見えない。