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Japanische Klassiker mit Furigana

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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

朝起きて着物をきる時、下腹の或処に、触るといやに痛痒いような腫物が一ツ、ぽつりと吹出ているのに心づいた。千代子はびっくりした。もしやこれが話にきく恐しい病気だったら、どうしようと覚えず身顫いをした。医者に見てもらった方がいいとは思いながら、耻しさと恐しさが先に立って見て貰いには行けない。薬屋から薬も買えない。毎日沈んだ顔色をして人知れず溜息ばかりついていたが、腫物は化膿もせず四、五日中に拭いたように直ってしまった。まァよかったと嬉し涙をこぼすと共に、千代子はいつも血色のよくない増田の身体が急に恐しくなって、接吻は勿論の事、手を握られたり抱きつかれたりする事も、なりたけ体よく避けるようにした。

増田は最初の晩のように、千代子の後を追いかけ、真暗な夜道を歩きながら、怨言のありたけを言いつづけたけれど、千代子は父さんに目っかって叱られたからと、出放題の言訳をして、その後は何と言われても一緒に夜道は歩かなかった。

いつの間にかその年も秋風が身にしみて来るころになった。千代子は夜道を一人かえる時、短いスカートからこの夏中むき出しにしていた両脚に、しみじみ靴たびがはきたくなり、家へかえるが否や、戸棚の中をさがして、投込んだまま忘れていたスェータに気がついた。