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Japanische Klassiker mit Furigana

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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

年が変ると間もなく世間は銀行預金の封鎖に驚かされたが、日銭の入る労働者と露店の商人ばかりは物貨の騰貴に却て懐中都合が好くなったらしく、町の商店が日の暮れると共に戸を閉めてしまうにも係らず、空地の露店は毎夜十一時近くまで電燈をつけていた。

あたりの様子で、その夜もかれこれその時刻になったらしく思われた頃である。佐藤の店の鍋の前にぬっと顔を出した女連の男がある。鳥打帽にジャンバー半ズボン。女は引眉毛に白粉口紅。縮髪に青いマフラの頬かむり。スコッチ縞の外套をきている。人柄を見て佐藤は、

「いらっしゃい。つけますか。」と言いながら燗徳利を取上げた。

「あったら、合成酒でない方が願いたいよ。」

「これは高級品ですから。あがって見ればわかります。」

「それはありがたい。」と男はコップをもう一つ出させて、女にも飲ませながら、

「お前、どう思った。あの玉じゃせいぜい奮発しても半分というところだろう。」

「わたしもそう思ってたのよ。まさか居る前でそうとも言えなかったから黙ってたんだけど。」

二人ともそれとなくあたりに気を配りながら、小声に話し合っている。折からごそごそと葭簀を片よせその間から身を斜にして店の中へ入ったのは、毎夜子供を寝かしつけた後、店仕舞の手つだいに来る千代子である。