Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜんぞうをおもう
善蔵を思う
Lesen Sie 善蔵を思う (ぜんぞうをおもう) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.041 Zeichen · 29 Bildschirme
堂々、袴をはいて出席し、大演説、などといきり立ってみるのだが、私は、駄目だ。人に迷惑を掛けている。善い作品を書いていない。みんな、ごまかしだ。不正直だ。卑屈だ。嘘つきだ。好色だ。弱虫だ。神の審判の台に立つ迄も無く、私は、つねに、しどろもどろだ。告白する。私は、やっぱり袴をはきたかったのである。大演説なぞと、いきり立ち、天地もゆらぐ程の空想に、ひとりで胸を轟かせ、はっと醒めては自身の虫けらを知り、頸をちぢめて消えも入りたく思うのだが、またむくむくと、せめて袴くらいは、と思う。俗世のみれんを捨て切れないのである。どうせ出るなら、袴をはいて、きちんとして、私は歯が欠けて醜いから、なるべく笑わず、いつもきゅっと口を引き締め、そうして皆に、はっきりした言葉で御無沙汰のお詫びをしよう。すると、或いは故郷の人も、辻馬の末弟、噂に聞いていたよりは、ちゃんとしているでは無いかと、ひょっとしたら、そう思ってくれるかもわからない。出よう。やっぱり、袴をはいて出よう。そうして皆に、はきはきした口調で挨拶して、末席につつましく控えていたら、私は、きっと評判がよくて、話がそれからそれへと伝わり、二百里離れた故郷の町までも幽かに響いて、病身の老母を、静かに笑わせることが、出来るのである。