Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜんぞうをおもう

善蔵を思う

太宰 治

Lesen Sie 善蔵を思う (ぜんぞうをおもう) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.041 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

「おい、いまのは贋物だぜ。」私は自分の顔が真赤になるのを意識した。耳朶まで熱くなった。

「知っていました。」と家内は、平気であった。「私が出て、お断りしようと思っていたのに、あなたが、拝見しましょうなんて言って、出てゆくんだもの。あなただけ優しくて、私ひとりが鬼婆みたいに見られるの、いやだから、私、知らん振りしていたの。」

「お金が、惜しいんだ、四円とは、ひどいじゃないか。煮え湯を呑ませられたようなものだ。詐欺だ。僕は、へどが出そうな気持だ。」

「いいじゃないの。薔薇は、ちゃんと残っているのだし。」

薔薇は、残って在る。その当りまえの考えが、私を異様に勇気づけた。それからの四、五日間、私は、この薔薇に夢中になった。米のとぎ水をやった。萱で添木を作ってやった。枯れた葉を一枚一枚むしりとってやった。枝を剪んでやった。浮塵子に似た緑色の小さい虫が、どの薔薇にも、うようよついていたのを、一匹残さず除去してやった。枯れるな、枯れるな、根を、おろせ。胸をわくわくさせて念じた。薔薇は、どうやら枯れずに育った。

私は、朝、昼、晩、みれんがましく、縁側に立って垣根の向うの畑地を眺める。