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Japanische Klassiker mit Furigana

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うそアつかねえ

嘘アつかねえ

山本 周五郎

Lesen Sie 嘘アつかねえ (うそアつかねえ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.523 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

爺さんも話さないし尋ねる客もない。……客はただ「爺さん」とか「とッさん」とか「おやじ」などと呼ぶだけだし、爺さんのほうは殆んど口をきかない。実際には腰は曲ってはいないのだが、腰の曲っているようなたどたどしい動作で、酒の燗をしたり、鍋の下を煽いだり、煮込みを皿へつけたり、箸や盃を洗ったり、絶えずなにかかにかしているが、それはできるだけ客と話すことを避けているようにみえる。そして事実そのとおりであって、諄い客などが相当しツこく話しかけても、ほんのおあいそに返辞をするくらいで、身を入れて聞くとか自分から話しだすなどということは決してなかった。

信吉はうらぶれたような気持になると、よくその「やなぎ屋」へいって酒を飲んだ。

彼はその横丁ぜんたいが好きだった。両側の家に住む人たちはどんな生業をしているものか、彼のゆくじぶんにはどの家も雨戸を閉めて、隙間だらけのあばら家なのに灯の漏れるようすもない。ときたま赤児の泣く声や、病人らしい力のない咳や、がたごと雨戸をあけたてする音などが聞えるほかは、みんな空家のようにひっそりとしていた……その横丁へはいってゆくと、信吉はふしぎな心のやすらぎを覚えた。