Japanische Klassiker mit Furigana
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しじゅうねんまえのふくろだのたき
四十年前の袋田の瀑
木暮 理太郎
Lesen Sie 四十年前の袋田の瀑 (しじゅうねんまえのふくろだのたき) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.049 Zeichen · 8 Bildschirme
記憶に残っているのはつまらぬことばかりだ。だらだら続きの小山には行けども行けども見渡す限りの若木が黄褐色の大きな葉を風にそよがせていた。幾度か峠を上る毎に振り返ると大津小名浜の弓なりの長汀が白く波立って霧の間から望まれた。花園神社は流石に名高いだけにこんな山の中の社殿としては立派なものだと思った。下君田という山村の一軒しかない宿屋では、晩飯の菜に身かき鯡の煮付けと、醤油で炒りつけた蝗とを山盛りにした皿がお膳の上に頑張っていた。生憎鶏卵がないという。運よく初茸を実にした味噌汁があったので助かった。
夜中にふと目が覚めると階下で七、八人で喧嘩をしている声が聞える、気になるので梯子段の下り口から覗くと、いきり立った荒くれ男が今にも殴り合いを始めそうである、驚いてまた床の中に潜り込み、如何なることかと心配していたが、昼の疲れで何時かぐっすり寝てしまったのは幸であった。後で聞くとここは毎晩のように賭博の開かれる宿であるという。一泊十銭は平潟あたりの十七銭に較べては安いものであったとはいえ、決して安心して泊れる家ではなかった。今はこのあたりまで炭坑が開かれたので、最早昔の面影は残っていまい。