Japanische Klassiker mit Furigana
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もぐらとらくばん
土鼠と落盤
黒島 伝治
Lesen Sie 土鼠と落盤 (もぐらとらくばん) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.823 Zeichen · 36 Bildschirme
「うちの市三、別条なかったか。」
市三は、影も形も彼の眼に這入らなかった。井村は、眼を伏せて、溜息をして、松ツァンの傍を病院の方へ通りぬけた。
「市三、別条なかったかな?」
不安に戦慄した松ツァンの声が井村の背後で、又、あとから来る担架に繰りかえされた。
「…………」
そこでも、坑夫は、溜息をついて、眼を下へ落した。
「うちの市三、別条なかったかなア!」
石炭酸の臭いがプン/\している病院の手術室へ這入ると、武松は、何気なく先生、こんな片身をそぎ取られて、腹に穴があいて、一分間と生きとれるもんですか、ときいた。
「勿論即死さ。」
医者は答えた。武松は忽ち元気を横溢さした。
「じゃ、先生、この森と柴田の死亡診断書にゃ、坑内で即死したと書いて呉れますね。」
「わしは、坑内に居合さなかったからね。」あやしげな口調になった。「こうして、監督がここへかついで来さしたんだから、勿論、まだ、命はあったかもしれんな。」
「先生が見て即死なら、見られたその通りを書いて呉れりゃいゝじゃありませんか。」
返事がなかった。
「わしら行って見た時にゃ、もう息はなかったんですよ。」
「村上先生じゃったらなア!」