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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちずにないまち

地図にない街

橋本 五郎

Lesen Sie 地図にない街 (ちずにないまち) von 橋本 五郎 (はしもとごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.139 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

と老人が元気に帰って来たのは間もなくだった。

氏はその時の誘惑にも、到底勝つことはできなかったといっている。同じ北海道へやられるのなら、なんでもかまわずもらってやれ、とそんなさもしい気持になったそうである。

新しい朝日の袋をぷつりと切って、その一本に火をつけた時のよろこび! 氏は感謝という言葉が持つ意味を、その時はじめて知ったと思った。胸いっぱいに吸いこんで、それからそろそろとできるだけながく、静かに静かに吐き出して、吐ききったところでしばらく眼をつむって、氏は空へ出て行く紫の煙の、氏の腹の中からいろんな汚物を拭い去って行く清々しさに陶酔した。

「蟇口を投げちゃったりして、あぶれちゃったのかい?」

老人は喫茶店の卓にでも凭った調子で、ひどく鷹揚な口のきき方をした。氏の胸には朝からの、いやふた月この方の苦しさを感じる健康が、次第に回復してきた。苦い苦い都会の経験が、いろんな形で思い出された。

老人の問いに幾分警戒の心は動いた。後で考えてみても説明のできぬ気持で、その時氏は現在までのすべてを老人に話したというのである。が老人は、氏がひそかに期待した北海道行きの話は持ち出さなかった。