Japanische Klassiker mit Furigana
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こうふ
坑夫
Lesen Sie 坑夫 (こうふ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.690 Zeichen · 283 Bildschirme
しまいには、どこにどんな山があるかいっこう見当がつかなくなる。立ちながら眺めると、木も山も谷もめちゃめちゃになって浮き出して来る。頭の上の空さえ、際限もない高い所から手の届く辺まで落ちかかった。長蔵さんは、
「こりゃ、雨だね」
と、歩きながら独言を云った。誰も答えたものはない。四人とも雲の中を、雲に吹かれるような、取り捲かれるような、また埋められるような有様で登って行った。自分にはこの雲が非常に嬉しかった。この雲のお蔭で自分は世の中から隠したい身体を十分に隠すことが出来た。そうして、さのみ苦しい思いもしずにその中を歩いて行ける。手足は自由に働いて、閉じ籠められたような窮屈も覚えない上に、人目にかからん徳は十分ある。生きながら葬られると云うのは全くこの事である。それが、その時の自分には唯一の理想であった。だからこの雲は全くありがたい。ありがたいという感謝の念よりも、雲に埋められ出してから、まあ安心だと、ほっと一息した。今考えると何が安心だか分りゃしない。全くの気違だと云われても仕方がない。仕方がないが、こう云う自分が、時と場合によれば、翌が日にも、また雲が恋しくならんとも限らない。