Japanische Klassiker mit Furigana
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まど
堀辰雄集 新潮日本文学16
堀 辰雄
Lesen Sie 堀辰雄集 新潮日本文学16 (まど) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.906 Zeichen · 119 Bildschirme
「……私にはお母様のことはよく分っているのよ。でも、お母様には、私のことがちっとも分らないの。何ひとつだって分って下さらないのね。……けれども、これだけは事実としてお分りになっておいて頂戴。私、こちらへ来る前に実はおば様にさっきのお話の承諾をして来ました。……」
夢とも現ともつかないような空ろな目ざしでお前をじっと見つめている私の目を、お前は何か切なげな目つきで受けとめていた。私はお前の云っている事がよく分らないように、そしてそれを一層よく聞こうとするかのように、殆ど無意識に寝台の上に半ば身を起そうとした。
しかし、そのときはお前はもう私の方をふりむきもしないで、素早く扉のうしろに姿を消していた。
下の台所ではさっきからもう爺やたちが起きてごそごそと何やら物音を立て出していた。それが私にそのまま起きてお前のあとを追って行くことをためらわせた。
私はその朝も七時になると、いつものように身だしなみをして、階下に降りていった。私はその前にしばらくお前の寝室の気配に耳を傾けてみたが、夜じゅうときどき思い出したようにきしっていた寝台の音も今はすっかりしなくなっていた。