Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうおんき
報恩記
Lesen Sie 報恩記 (ほうおんき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.803 Zeichen · 30 Bildschirme
これはどうした訣でございましょう? 倅は何かの間違いから、甚内と思われたのでございましょうか? しかし御吟味も受けたとすれば、そう云う間違いは起りますまい。それとも阿媽港甚内というのは、倅だったのでございましょうか? わたしの宅へ来た贋雲水は、誰か甚内の名前を仮りた、別人だったのでございましょうか? いや、そんな筈はございません。三日と云う日限を一日も違えず、六千貫の金を工面するものは、この広い日本の国にも、甚内のほかに誰が居りましょう? して見ると、――その時わたしの心の中には、二年以前雪の降った夜、甚内と庭に争っていた、誰とも知らぬ男の姿が、急にはっきり浮んで参りました。あの男は誰だったのでございましょう? もしや倅ではございますまいか? そう云えばあの男の姿かたちは、ちらりと一目見ただけでも、どうやら倅の弥三郎に、似ていたようでもございます。しかしこれはわたし一人の、心の迷いでございましょうか? もし倅だったとすれば、――わたしは夢の覚めたように、しけじけ首を眺めました。するとその紫ばんだ、妙に緊りのない唇には、何か微笑に近い物が、ほんのり残っているのでございます。