Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうおんき
報恩記
Lesen Sie 報恩記 (ほうおんき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.803 Zeichen · 30 Bildschirme
弥三右衛門は苦々しそうに、行燈へ眼を外らせました。
「あいつが使いおった金でもあれば、今度も急場だけは凌げたかも知れぬ。それを思えば勘当したのは、………」
弥三右衛門はこう云ったなり、驚いたようにわたしを眺めました。これは驚いたのも無理はありません。わたしはその時声もかけずに、堺の襖を明けたのですから。――しかもわたしの身なりと云えば、雲水に姿をやつした上、網代の笠を脱いだ代りに、南蛮頭巾をかぶっていたのですから。
「誰だ、おぬしは?」
弥三右衛門は年はとっていても、咄嗟に膝を起しました。
「いや、御驚きになるには及びません。わたしは阿媽港甚内と云うものです。――まあ、御静かになすって下さい。阿媽港甚内は盗人ですが、今夜突然参上したのは、少しほかにも訣があるのです。――」
わたしは頭巾を脱ぎながら、弥三右衛門の前に坐りました。
その後の事は話さずとも、あなたには推察出来るでしょう。わたしは北条屋の危急を救うために、三日と云う日限を一日も違えず、六千貫の金を調達する、恩返しの約束を結んだのです。――おや、誰か戸の外に、足音が聞えるではありませんか? では今夜は御免下さい。