Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
そのほうは、もう何の感じもひき起さなかった。ただ……。
(もう一度、あの娘に逢ってから死にたい)
そう思うと、矢も楯もたまらなくなってくるのだった。……
思いがけもなく、こんなことをおもい出した。
(あの匂いは、たしかに、食堂の入口にも漂っていたようだったが、あの娘がひょっとしてあそこで食事をしたとすると、その間、鼬鼠のケープは……よし。なんとかなる!)
ひとッ飛びに床から跳ね上ると、また段階を駆け降りて食堂へ走り込んだ。
給仕長が入口に立って、食堂を眺めていた。
「昨夜、ここで、黒い服を着た二十歳ばかりの娘がひとりで食事をしなかったかね」
「なさいました」
「鼬鼠のケープをつけていたろう」
「それは存じませんです。どうか、外套置場でおたずね下さいませ」
「有難う、それでいいんだ」
竜太郎は食堂を飛び出した。
外套置場の女は、たいへんに明快だった。
「はい、たしかにお預りしました。『グリュナアル』の店でつくった、鼬鼠の立派なケープでございました」
「たしかに、『グリュナアル』だったね」
「はい、たしかに」
雲の間から薄い陽ざしが洩れて来た。そんな感じだった。
(巴里の『グリュナアル』