Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
黙らせるために、自分の唇で少女の口をふさいでしまった。やはり、どこか、心がしらじらとしていて、調子を合せるほど無邪気にはなれなかった。そんなことは、どうでもよかった。
自殺するはずの、じぶんが、それを実行し得なかったのは、思いがけない急転換のせいである。もう会えないかもしれないという、その思いが恋情を駆りたてた。……しかし、じぶんが身も※れるまで、あの少女を恋いわたるようになったのは、ただそれだけのためであろうか。じぶんの心は、はっきりと(いな!)とこたえる。少女の誠実と無垢な愛が、じぶんの心情を刺し貫いたためである。へなちょこなじぶんの根性は、純真な愛の平手で横ッ面をぴしゃりとやられ、深いところで昏睡していた本心が、びっくりして眼をさまして、おやッ、と思った。こんな無垢な愛情には終生、二度とめぐりあうことはないぞ。いつのまにかこちらも、命をかける気になっていた。
ところが、ソルボンヌ大学の教授室で、あの夜の少女がリストリアの王女だとわかると、持ちまえのへなへな心は、一夜の気まぐれに弄ばれたのだと頭からきめ込んでしまった。それならそれで諦めでもすることか、不甲斐ない恋情で身をやつらせ、未練がましく悶えたり恨んだりしていた。