Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
だいたいに於て、こういうのを不幸な魂と言って差支えないのであろう。こういう境遇は竜太郎自身がつくり出したのではなく、知らぬ間に、嵌め絵のように嵌め込まれたのに過ぎないのだとすれば、たぶん、神様も憐れと思われるにちがいない。
竜太郎は人生に対して何の興味もなければ、何の期待もない。今となっては、生きている一日一日が、それ自体耐えられない重荷になって来た。もう、これ以上辛抱してやる必要はないと覚悟をきめたのである。……
竜太郎は、いつもの自分の揺椅子へ行こうと思って、食堂の椅子から立ち上った。
それは、海沿いの長い土壇の端にただ一脚だけ離れて置かれ、大きな竜舌蘭の鉢植が樹牆のようにその周りを取巻いていて、ちょうど鴨池の伏せ場のようになっている。竜太郎は、いつも、たった一人でこの隠れ場に逃げ込み、揺椅子の上で身体を揺すりながら、誰からも邪魔をされることなく、沈思したり、海を眺めたりして暮らしていた。
竜太郎が食堂を出て、広間の入口まで来ると、ふと、何とも言えぬほのかな香がその辺に漂っているのを感じた。
広間の窓はみな閉じられているから、風が運んで来た花の香ではない。