Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
どういう感情の動きも、心理の反射も、そこには見られなかった。
(女王は、おれを、忘れている)
あのようなこまやかな「時」のあとで、その相手を見忘れるなどということがあるべきはずはない。……しかし女王の顔は、初見の人を眺める、あの冷淡な「他人の顔」だった。
(女王は、まるっきり、じぶんを知らないのだ!)
竜太郎の心は、この突然の混乱で、支離滅裂になってしまった。じぶんがいま、何を考えているのか、てんでわからなかった。
謁見室の入口で、式部長官が、次の謁見者の名を披露している。
「ニコラス・ウォロスキー。……カルニヤ・ブレビッグ……」
もう御前を退出しなくてはならない。
しかし、どうしても、これでは、諦めかねた。竜太郎は、軽く、半歩前へ歩み出ると、女王の眼を瞶めながら、必死のいきおいで、囁いた。
「女王殿下、もう、お忘れですか? 私は、あの夜、サヴォイ・ホテルの土壇でお目にかかった、志村竜太郎です。志村……」
女王の表情は、風のない日の沼のように静まりかえっていて、小波ひとつ立たなかった。どのような、感情の翳も……。
はじめて、了解した。
(忘れたふりをしているのだ!)突っ放されてしまった。