Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
すると、すぐ足許のところを、白木の大きな函が流れており、函から喰み出た玉葱があたりに漾っていた。私は函を引寄せ、中から玉葱を掴み出しては、岸の方へ手渡した。これは上流の鉄橋で貨車が顛覆し、そこからこの函は放り出されて漾って来たものであった。私が玉葱を拾っていると、「助けてえ」という声がきこえた。木片に取縋りながら少女が一人、川の中ほどを浮き沈みして流されて来る。私は大きな材木を選ぶとそれを押すようにして泳いで行った。久しく泳いだこともない私ではあったが、思ったより簡単に相手を救い出すことが出来た。
暫く鎮まっていた向岸の火が、何時の間にかまた狂い出した。今度は赤い火の中にどす黒い煙が見え、その黒い塊が猛然と拡って行き、見る見るうちに焔の熱度が増すようであった。が、その無気味な火もやがて燃え尽すだけ燃えると、空虚な残骸の姿となっていた。その時である、私は川下の方の空に、恰度川の中ほどにあたって、物凄い透明な空気の層が揺れながら移動して来るのに気づいた。竜巻だ、と思ううちにも、烈しい風は既に頭上をよぎろうとしていた。まわりの草木がことごとく慄え、と見ると、その儘引抜かれて空に攫われて行く数多の樹木があった。