Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
「いつか自分たちで、自分たちの好きな映画が作りたいな」
彼の友人は、彼に期待を持たせるように、そう呟くのだった。だが、そういう明るい社会が彼の生存中にやって来るのだろうか。今、彼の眼の前には破滅にむかってずるずる進んでいる無気味な機械力の流れがあるばかりだった。
食堂を出ると、彼はもっと夕暮の巷を漫歩していたくなった。外で食事をとったり、帰宅を急がなくてもいい身の上になったことが、今しきりに顧みられた。彼は友人の行く方に従いてぶらぶら歩いていた。
「橋を見せてやろうか」
友は彼を誘って勝鬨橋の方へ歩いて行った。橋まで来ると、巷の眺めは一変して、広大無辺なものを含んでいた。冷やかな水と仄暗い空があった。(やがて、このあたりも……)夕靄のなかに炎の幻が見えるようだった。それから銀座四丁目の方へ引返して行くと、魔の影は人波と夕靄のなかに揺れていた。(このひとときが破滅への進行のひとときとしても……)靄のなかに動いている人々の影は陰惨ななかにも、まだかすかに甘い憂愁がのこっているようだ。だが、彼が友人と別れて電車に乗ると、夜の空気のなかから、何かぞくぞく皮膚に迫ってくるものがあった。