Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
眼はニスを塗ったようにピカピカし、ルージュで濡れた唇は血のようだ。あれが女の眼であり、唇かと僕はおもう。揺れているガス体は今にも何かパッと発火しそうだ。だが、僕の靴底を奇妙に冷たいものが流れる。どうにもならぬ冷たいものが……。あの女も恐らく炎々と燃える焔に頬を射られ、跣で地べたを走り廻ったのか。今も何かを避けようとしたり、何かに喰らいつこうとするリズムが、それも揺れている。めらめらと揺れている。それにしても、僕の靴底を流れてゆく冷たいものは……。ふと、彼の腰掛のすぐ後に、ふらふらの学生が近寄ってくる。自分の上衣のポケットからコップを取出し、それに酒を注いでもらっている。
「いいなあ、いいなあ、人間が信じられたらなあ」とその学生は甘ったれた表情でよろよろしている。冷たいものはざわざわとゆれる。火が、火が、火が、だが、火はもうここにはなさそうだ。火事場の跡のここは水溜りなのか。
水溜りを踏越えたかと思うと、彼の友人が四つ角のもの蔭で「夜の女」と立話している。それからその女は黙って二人の後をついて来る。薄暗い喫茶店の隅に入る。(どうして、そんな「夜の女」