Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

そんな言葉の仕組だけで、お互がお互を刺戟し、お互に感激し、そして人間は人間の観念を確かめ合い、人間は人間の観念を生産してゆく。だが、僕の靴底を流れるこの冷たい流れ、これは一たい何なのだ。)……ふと気がつくと、向うのテーブルでさっきまで議論に熱狂していた連中の姿も今はない。夜更が急に籐椅子の上に滑り堕ちている。隣の椅子で親切な友人はギラギラした眼の少女と話しあっている。(お腹がすいたな、何か食べに行かないか)友人は少女を誘う。(ええ、わたしとても貧乏なのよ)少女は二人の後について夜更の街を歩く。冷たい雨がぽちぽち降ってくる。彼の靴底はすぐ雨が沁みて、靴下まで濡れてゆく。灯をつけた食べもの屋はもう何処にもなさそうだ。(君もそんな靴はいていて、雨が沁みるだろう)彼はふと少女に訊ねてみる。(ええ 沁みるわ とても)少女はまるでうれしげに肯く。灯をつけた食べもの屋はもう何処にもない。(わたし帰るわ)少女は冷たい水溜りのなかに靴を突込んで立留る。

「火の唇」はいつまでたっても容易に捗らなかった。そして彼がそれをまだ書き上げないうちに、その淋しげな女とも別れなければならぬ日がやって来たのだ。