Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
最初顔に受けた光線を遮ろうとして覆うた手が、その手が、今も捩ぎとられるほど痛いと訴えている。
潮が満ちて来だしたので、私達はこの河原を立退いて、土手の方へ移って行った。日はとっぷり暮れたが、「水をくれ、水をくれ」と狂いまわる声があちこちできこえ、河原にとり残されている人々の騒ぎはだんだん烈しくなって来るようであった。この土手の上は風があって、睡るには少し冷々していた。すぐ向うは饒津公園であるが、そこも今は闇に鎖され、樹の折れた姿がかすかに見えるだけであった。兄達は土の窪みに横わり、私も別に窪地をみつけて、そこへ這入って行った。すぐ側には傷ついた女学生が三四人横臥していた。
「向うの木立が燃えだしたが逃げた方がいいのではないかしら」と誰かが心配する。窪地を出て向うを見ると、二三町さきの樹に焔がキラキラしていたが、こちらへ燃え移って来そうな気配もなかった。
「火は燃えて来そうですか」と傷ついた少女は脅えながら私に訊く。
「大丈夫だ」と教えてやると、「今、何時頃でしょう、まだ十二時にはなりませんか」とまた訊く。
その時、警戒警報が出た。どこかにまだ壊れなかったサイレンがあるとみえて、かすかにその響がする。