Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

この街では、はじめてきく高射砲であったが、どんよりと曇った空がかすかに緊張して来た。だが、機影は見えず、空襲警報は一旦、警戒警報に移ったりして、人々はただそわそわしていた。……正三が事務室へ這入って行くと、鉄兜を被った上田の顔と出逢った。

「とうとう、やって来ましたの、なんちゅうことかいの」

と、田舎から通勤して来る上田は彼に話しかける。その逞しい体躯や淡泊な心を現している相手の顔つきは、いまも何となしに正三に安堵の感を抱かせるのであった。そこへ清二のジャンパー姿が見えた。顔は颯爽と笑みを浮べようとして、眼はキラキラ輝いていた。……上田と清二が表の方へ姿を消し、正三ひとりが椅子に腰を下ろしていた時であった。彼は暫くぼんやりと何も考えてはいなかったが、突然、屋根の方を、ビュンと唸る音がして、つづいて、パリパリと何か裂ける響がした。それはすぐ頭上に墜ちて来そうな感じがして、正三の視覚はガラス窓の方へつっ走った。向うの二階の檐と、庭の松の梢が、一瞬、異常な密度で網膜に映じた。音響はそれきり、もうきこえなかった。暫くすると、表からドヤドヤと人々が帰って来た。