Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

と順一は呟いて、そんなものがあるのか無いのか曖昧な顔つきであった。そのうちには出してくれるのかと待っていたが一向はっきりしないので、正三はまた順一に催促してみた。すると、順一は意地悪そうに笑いながら、「そんなものは要らないよ。担いで逃げたいのだったら、そこに吊してあるリュックのうち、どれでもいいから持って逃げてくれ」と云うのであった。そのカバンは重要書類とほんの身につける品だけを容れるためなのだと、正三がいくら説明しても、順一はとりあってくれなかった。……「ふーん」と正三は大きな溜息をついた。彼には順一の心理がどうも把めないのであった。「拗ねてやるといいのよ。わたしなんか泣いたりして困らしてやる」と、康子は順一の操縦法を説明してくれた。鏡台の件にしても、その後けろりとして順一は疎開させてくれたのであった。だが、正三にはじわじわした駈引はできなかった。……彼は清二の家へ行ってカバンのことを話した。すると清二は恰度いい布地を取出し、「これ位あったら作れるだろう。米一斗というところだが、何かよこすか」というのであった。布地を手に入れると正三は康子にカバンの製作を頼んだ。