Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

たしか兵隊にちがいない。兵隊、――それが近頃この街のいたるところを占有しているらしい。練兵場に蟻の如くうごめく影はもとより、ちょっとした建物のほとりにも、それらしい影が点在する。……サイレンは鳴ったのだろうか。荷車がいくつも街中を動いている。街はずれの青田には玩具の汽車がのろのろ走っている。……静かな街よ、さようなら。B29一機はくるりと舵を換え悠然と飛去るのであった。

琉球列島の戦が終った頃、隣県の岡山市に大空襲があり、つづいて、六月三十日の深更から七月一日の未明まで、呉市が延焼した。その夜、広島上空を横切る編隊爆音はつぎつぎに市民の耳を脅かしていたが、清二も防空頭巾に眼ばかり光らせながら、森製作所へやって来た。工場にも事務室にも人影はなく、家の玄関のところに、康子と正三と甥の中学生の三人が蹲っているのだった。たったこれだけで、こんな広い場所を防ぐというのだろうか、――清二はすぐにそんなことを考えるのであった。と、表の方で半鐘が鳴り「待避」と叫ぶ声がきこえた。四人はあたふたと庭の壕へ身を潜めた。密雲の空は容易に明けようともせず、爆音はつぎつぎにききとれた。