Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
……ふと、トットトットという川のどよめきに清二はびっくりしたように眼をみひらいた。何か川をみつめながら、さきほどから夢をみていたような気持がする。それも昔読んだ旧約聖書の天変地異の光景をうつらうつらたどっていたようである。すると、崖の上の家の方から、「お父さん、お父さん」と大声で光子の呼ぶ姿が見えた。清二が釣竿をかかえて石段を昇って行くと、妻はだしぬけに、「疎開よ」と云った。
「それがどうした」と清二は何のことかわからないので問いかえした。
「さっき大川がやって来て、そう云ったのですよ、三日以内に立退かねばすぐにこの家とり壊されてしまいます」
「ふーん」と清二は呻いたが、「それで、おまえは承諾したのか」
「だからそう云っているのじゃありませんか。何とかしなきゃ大変ですよ。この前、大川に逢った時にはお宅はこの計画の区域に這入りませんと、ちゃんと図面みせながら説明してくれた癖に、こんどは藪から棒に、二〇メートルごとの規定ですと来るのです」
「満洲ゴロに一杯喰わされたか」
「口惜しいではありませんか。何とかしなきゃ大変ですよ」と、光子は苛々しだす。
「おまえ行ってきめてこい」