Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
いま私が佇んでいる路には、時折人通りもあったが、私は暫くものに憑かれたような気分でいた。それから再び駅の方へ引返して行くと、何処からともなく、宿なし犬が現れて来た。そのものに脅えたような燃える眼は、奇異な表情を湛えていて、前になり後になり迷い乍ら従いてくるのであった。
汽車の時間まで一時間あったが、日陰のない広場にはあかあかと西日が溢れていた。外郭だけ残っている駅の建物は黒く空洞で、今にも崩れそうな印象を与えるのだが、針金を張巡らし、「危険につき入るべからず」と貼紙が掲げてある。切符売場の、テント張りの屋根は石塊で留めてある。あちこちにボロボロの服装をした男女が蹲っていたが、どの人間のまわりにも蠅がうるさく附纏っていた。蠅は先日の豪雨でかなり減少した筈だが、まだまだ猛威を振っているのであった。が、地べたに両足を投出して、黒いものをパクついている男達はもうすべてのことがらに無頓着になっているらしく、「昨日は五里歩いた」「今夜はどこで野宿するやら」と他人事のように話合っていた。私の眼の前にきょとんとした顔つきの老婆が近づいて来て、
「汽車はまだ出ませんか、切符はどこで切るのですか」