Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
〈僕の頭の……〉
〈僕の頭の……〉
〈僕の頭の……〉
僕には僕の歌声があるようだ。だが、僕は伊作を探しているのだ。伊作も僕を探しているのだ。それから僕はお絹を探しているのだ。お絹も僕を探そうとする。僕は伊作を知っている。僕はお絹を知っている。しかし伊作もお絹も僕の幻想、僕の乱れがちのイメージ、僕の向側にあるもの、僕のこちら側にあるもの……。ふと声がしだした。伊作の声が僕にきこえた。
〈伊作の声〉
世界は割れていた。僕は探していた。何かをいつも探していたのだ。廃墟の上にはぞろぞろと人間が毎日歩き廻った。人間はぞろぞろと歩き廻って何かを探していたのだろうか。新しく截りとられた宇宙の傷口のように、廃墟はギラギラ光っていた。巨きな虚無の痙攣は停止したまま空間に残っていた。崩壊した物質の堆積の下や、割れたコンクリートの窪みには死の異臭が罩っていた。真昼は底ぬけに明るくて悲しかった。白い大きな雲がキラキラと光って漾った。朝は静けさゆえに恐しくて悲しかった。その廃墟を遠くからとりまく山脈や島山がぼんやりと目ざめていた。夕方は迫ってくるもののために佗しく底冷えていた。