Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
僕は廃墟の上を歩きながら、これは僕ではないと思う。だが、廃墟の上を歩いている僕は、これが僕だ、これが僕だと僕に押しつけてくる。僕はここではじめて廃墟の上でたった今生れた人間のような気がしてくる。僕は吹き晒しだ。吹き晒しの裸身が僕だったのか。わかるか、わかるかと僕に押しつけてくる。それで、僕はわかるような気がする。子供のとき僕は何かのはずみですとんと真暗な底へ突落されている。何かのはずみで僕は全世界が僕の前から消え失せている。ガタガタと僕の核心は青ざめて、僕は真赤な号泣をつづける。だが、誰も救ってはくれないのだ。僕はつらかった。僕は悲しかった、死よりも堪えがたい時間だった。僕は真暗な底から自分で這い上らねばならない。僕は這い上った。そして、もう堕ちたくはなかった。だが、そこへ僕をまた突落そうとする何かのはずみはいつも僕のすぐ眼の前にチラついて見えた。僕はそわそわして落着がなかった。いつも誰かの顔色をうかがった。いつも誰かから突落されそうな気がした。突落されたくなかった。堕ちたくなかった。僕は人の顔を人の顔ばかりをよく眺めた。彼等は僕を受け容れ、拒み、僕を隔てていた。