Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
あのわけのわからないものたちは僕を僕を僕のなかでぐるぐると廻転さす。
僕は僕のなかをぐるぐる探し廻る。そうすると、いろんな時のいろんな人間の顔が見えて来る。僕にむかって微笑みかけてくれる顔、僕をちょっと眺める顔、僕に無関心の顔、厚意ある顔、敵意を持つ顔、……だが、それらの顔はすべて僕のなかに日蔭や日向のある、とにかく調和ある静かな田園風景となっている。僕はとにかく、いろんなものと、いろんな糸で結びつけられている。僕はとにかく安定した世界にいるのだ。
ジーンと鋭い耳を刺すような響がする。僕のいる世界は引裂かれてゆく。それらはない、それらはない! と僕は叫びつづける。それらはみんな飛散ってゆく。破片の速度だけが僕の眼の前にある。それらはない! それらはない! 僕は叫びつづける。……と、僕を地上に結びつけていた糸がプツリと切れる。こんどは僕が破片になって飛散ってゆく。くらくらとする断崖、感動の底にある谷間、キラキラと燃える樹木、それらは飛散ってゆく僕に青い青い流れとして映る。僕はない! 僕はない! 僕は叫びつづける。……僕は夢をみているのだろうか。
僕は僕のなかをぐるぐるともっと強烈に探し廻る。