Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

わたしはよほどどうかしている。わたしはよほどどうかしている。今すぐ今すぐしっかりしないと大変なことになりそうだった。わたしはわたしを支えようとした。わたしはわたしに凭れかかった。ゆるくゆるくゆるんで行く睡い瞼のすぐまのあたりを凄い稲妻がさッと流れた。わたしはうとうと睡りかかるとハッとわたしは弾きかえされた。後姿がまだチラついた。青いわたしの脊髄の闇に……。

わたしはわたしに迷わされているらしい。わたしはわたしに脅えだしたらしい。何でもないのだ、何でもないのだ、わたしなんかありはしない。昔から昔からわたしはわたしをわたしだと思ったことなんかありはしない。お盆の上にこぼれていた水、あの水の方がわたしらしかった。水、……水、……水、……わたしは水になりたいとおもった。青い蓮の葉の上でコロコロ転んでいる水銀の玉、蜘蛛の巣をつたって走る一滴の水玉、そんな優しい小さなものに、そんな美しい小さなものに、わたしはなれないのかしら。わたしはわたしを宥めようとおもうと、静かな水が眼の前をながれた。静かな水は苔の上をながれる。小川の水が静かに流れる。あっちからもこっちからも川が流れる。