Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
世界はひっそり静まっていた。ヒマラヤ山のお花畑に青い花が月光を吸っていた。そんなに地球は静かだったが、海底の渦はキリキリ舞った。大変なことになる大変なことになったとわたしは叫んだ。わたしの額のなかにギシギシと厭な音がきこえた。わたしは鋏だけでも持って逃げようかとおもった。わたしは予感で張裂けそうだ。それから地球は割れてしまった。濛々と煙が立騰るばかりで、わたしのまわりはひっそりとしていた。煙の隙間に見えて来た空間は鏡のように静かだった。と何か遠くからザワザワと潮騒のようなものが押しよせてくる。騒ぎはだんだん近づいて来た。と目の前にわたしは無数の人間の渦を見た。忽ち渦の両側に絶壁がそそり立った。すると青空は無限の彼方にあった。「世なおしだ! 世なおしだ!」と人間の渦は苦しげに叫びあって押合い犇めいている。人間の渦は藻掻きあいながら、みんな天の方へ絶壁を這いのぼろうとする。わたしは絶壁の硬い底の窪みの方にくっついていた。そこにおれば大丈夫だとおもった。が、人間の渦の騒ぎはわたしの方へ拡ってしまった。わたしは押されて押し潰されそうになった。わたしはガクガク動いてゆくものに押されて歩いた。