Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
昔から昔から、それらはあった、と……。そうだ、僕はもっともっとはっきり憶い出せて来た。お前は僕のなかに、それらを視つめていたのか。僕もお前のなかに、それらを視ていたのではなかったか。救いはないのか、救いはないのか、と僕たちは昔から叫びあっていたのだろうか。それだけが、僕たちの生きていた記憶ではなかったのか。だが救いは。僕にはやはりわからないのだ。お前は救われたのだろうか。僕にはわからない。僕にわかるのは救いを求める嘆きのなかに僕たちがいたということだけだ。そして僕はいる、今もいる、その嘆きのなかにつらぬかれて生き残っている。そしてお前はいる、今もいる、恐らくはその嘆きのかなたに……。
救いはない、救いはない、と、ふと僕のなかで誰かの声がする。僕はおどろく。その声は君か、友よ、友よ、遠方の友よ、その声は君なのか。忽ち僕の眼のまえに若い日の君のイメージは甦る。交響楽を、交響楽を人類の大シンフォニーを夢みていた友よ。人間が人間とぴたりと結びつき、魂が魂と抱きあい、歓喜が歓喜を煽りかえす日を夢みていた友よ。あの人類の大劇場の昂まりゆく波のイメージは……。