Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
あんなに美しかった束の間に嘗ての姿をとりもどすかのように、みんな初々しく。
友よ、友よ、君たちはいる、にこやかに新しい書物を抱えながら、涼しい風の電車の吊革にぶらさがりながら、たのしそうに、そんなに爽やかな姿で。
隣人よ、隣人よ、君たちはいる、ゆきずりに僕を一瞬感動させた不動の姿でそんなに悲しく。
そして、妻よ、お前はいる、殆ど僕の見わたすところに、最も近く最も遙かなところまで、最も切なる祈りのように。
死者よ、死者よ、僕を生の深みに沈めてくれるのは……ああ、この生の深みより仰ぎ見るおんみたちの静けさ。
僕は堪えよ、静けさに堪えよ。幻に堪えよ。生の深みに堪えよ。堪えて堪えて堪えてゆくことに堪えよ。一つの嘆きに堪えよ。無数の嘆きに堪えよ。嘆きよ、嘆きよ、僕をつらぬけ。還るところを失った僕をつらぬけ。突き離された世界の僕をつらぬけ。
明日、太陽は再びのぼり花々は地に咲きあふれ、明日、小鳥たちは晴れやかに囀るだろう。地よ、地よ、つねに美しく感動に満ちあふれよ。明日、僕は感動をもってそこを通りすぎるだろう。
(昭和二十四年八月号『群像』)