Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
雑誌がつぶれ、出版社が倒れ、微力な作家が葬られてゆく情勢に、みんな暗澹とした気分だった。一そのこと靴磨になろうかしら、と、彼は雑沓のなかで腰を据えて働いている靴磨の姿を注意して眺めたりした。
「こないだの晩も電車のなかで、FとNと三人で噂したのは、あなたのことです。これからさき、これからさき、どうして一たい生きて行くのでしょうか」近くフランスへ留学することに決定しているEは、彼を顧みて云った。その詠嘆的な心細い口調は、黙って聞いている彼の腸をよじるようであった。彼はとにかく身を置ける一つの部屋が欲しかった。
荻窪の知人の世話で借れる約束になっていた部屋を、ある日、彼が確かめに行くと、話は全く喰いちがっていた。茫然として夕ぐれの路を歩いていると、ふと、その知人と出逢った。その足で、彼は一緒に吉祥寺の方の別の心あたりを探してもらった。そこの部屋を借りることに決めたのは、その晩だった。
騒々しい神田の一角から、吉祥寺の下宿の二階に移ると、彼は久し振りに自分の書斎へ戻ったような気持がした。静かだった。二階の窓からは竹藪や木立や家屋が、ゆったりと空間を占めて展望された。