Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
翌日、ペンクラブは解散になったので、彼は一行と別れ、ひとり電車に乗った。幟町の家に帰ってみると、裏の弟と平田屋町の次兄が来ていた。こうして兄弟四人が顔をあわすのも十数年振りのことであった。が、誰もそれを口にして云うものもなかった。三畳の食堂は食器と人でぎっしりと一杯だった。「広島の夜も少し見よう。その前に平田屋町へ寄ってみよう」と、彼は次兄と弟を誘って外に出た。次兄の店に立寄ると、カーテンが張られ灯は消えていた。
「みんなが揃っているところを一寸だけ見せて下さい」
奥から出て来た嫂に彼は頼んだ。寝巻姿や洋服の子供がぞろぞろと現れた。みんな、嘗て八幡村で佗しい起居をともにした戦災児だった。それぞれ違う顔のなかで、彼に一番懐いていた長女のズキズキした表情が目だっていた。彼はまたすぐ往来に出た。それから三人はぶらぶらと広島駅の方まで歩いて行った。夜はもう大分遅かったが、猿猴橋を渡ると、橋の下に満潮の水があった。それは昔ながらの夜の川の感触だった。京橋まで戻って来ると、人通りの絶えた路の眼の前を、何か素速いものが横切った。
「いたち」と次兄は珍しげに声を発した。