Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
それは病苦と祈りを含んだ新しい日々のようであった。「どうなるのでしょう」と妻の眼はふるえる。彼も突離されたように、だが、その底で彼は却って烈しく美しいものを感じた。彼はとり縋るようにそれに視入っているのだった。
その後、妻が家に戻って来て、療養生活をつづけるようになってからも、烈しく突き離されたものと美しく灼きつけられたものが、いつも疼いていた。この時を覘うように、殺気立った世の波は彼の家に襲って来た。家政婦は不意に来なくなり、それからその次に雇った女中は二日目にものを盗んで去った。彼はがくんと蹲り祈りと怒りにうち震えた。その次に通いでやって来るようになった女中は何事もなく漸くこの家に馴れて来そうだった。
それから少しずつ穏かな日がつづいた。いつも彼の皮膚は病妻の容態をすぐ側で感じた。些細な刺戟も天候のちょっとした変動もすぐに妻の体に響くのだったが、脆弱い体質の彼にはそれがそのまま自分の容態のようにおもえた。無限に繊細で微妙な器と、それを置くことの出来る一つの絶対境を彼は夢みた。静謐が、心をかき乱されることのない安静が何よりも今は慕わしかった。……だが、ある夜、妻の夢では天上の星が悉く墜落して行った。