Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
そこには今では、彼にとって全く無縁のものや、激しく彼を拒否しようとするもののみが満ち溢れていた。それでなくても、顔の固疾や、脆弱な体質が出足を鈍らすのであったが、着つけない服をつけ、久し振りに靴を穿いて出掛ける時には、まるで大旅行に出て行くように悲壮な気持がしたものであった。……鱶の泳ぎ廻る海底の姿と黙示録の幻影がいつまでも重たく彼の心にかさなり合っていた。
生涯のある時期に於いて、教師をするということは、僕にとって予定されていたことかも知れません、とにかく、やってみるつもりです。――彼はある朝、ひっそりとした時刻に、友人に対ってこんな手紙を書いた。そしてペンを擱くと、障子の硝子の向うに見える空が、いまどこまでも白く寒々と無限に展がってゆくように想えた。あの寒々とした中に、以前からこの予言は誌されていたのであろうか――近く始ろうとする教師の姿をぼんやり考えてみた。殆ど何の自信も期待も持てなかったが、それでも、そこへ強いてゆくものが、たしかにあった。彼の安静な、そしてまた業苦多い、孤独の三昧境は既にこの二三年前から内からも外からも少しずつ破壊されていた。