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Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

の世界のように静まっていた。それから、障子の内側には妻の病床をとりかこんで、見なれた調度や、小さな装飾品が、病人の神経を鎮めるような表情をもって静かに呼吸づいているのだ。――そうして、妻が病床にいるということだけが、現在彼の生きている世界のなかに、とにかく拠りどころを与えているようだった。

彼の呼吸づいている外側の世界は、ぼんやりと魔ものの影に覆われてもの悲しく廻転しているのだった。週に一度、電車に乗って彼は東京まで出掛けて行くのだが、人々の服装も表情も重苦しいものに満たされていた。その文化映画社に入社してまだ間もない彼には、そこの運転は漠然としかわからなかったが、ここでも何かもう追い詰められてゆくものの影があった。試写が終ると、演出課のルームで、だらだらと合評会がつづけられる。どの椅子からも、さまざまの言いまわしで何ごとかが論じられている。だが、それらは彼にとって、殆ど何のかかわりもないことのようだった。殆ど何のかかわりもない男が黙りこくって椅子に掛けている。その男の脳裏には、家に残した病妻と、それから、眼には見えないが、刻々に迫ってくる巨大な機械力の流れが描かれていた。