Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
それから、彼が枕頭で語る言葉から、彼の読み漁っている本のなかの知織の輪郭まで感じとっているような気もした。
昨日も彼はリュックを肩にして、ある知りあいの農家のところまで茫々とした野らを歩いていた。茫々とした草原に細い白い路が走っていて、真昼の静謐はあたりの空気を麻痺させているようだった。が、ふと彼の眼の四五米彼方で、杉の木が小さく揺らいだかとおもうと、そのまま根元からパタリと倒れた。気がつくと誰かがそれを鋸で切倒していたのだが、今、青空を背景に斜に倒れてゆく静かな樹木の一瞬の姿は、フィルムの一齣ではないかとおもわれた。こんな、ひっそりとした死……それは一瞬そのまま鮮かに彼の感覚に残ったが、その一齣はそのまま家にいる妻の方に伝わっているのではないかとおもえた。……農家から頒けてもらったトマトは庭の防空壕の底に籠に入れて貯えられた。冷やりとする仄暗い地下におかれたトマトの赤い皮が、上から斜に洩れてくる陽の光のため彼の眼に泌みるようだった。すると、彼には寝床にいる妻にこの仄暗い場所の情景が透視できるのではないかしらとおもえた。
……生暖かい底に不思議な冷気を含んだ風がうっとりと何か現在を追憶させていた。