Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
「……死んだ弘が、今年のクリスマスには、ママに花束をあげるっていってたのよ」
と、良子はしずかな声でいった。
「まあ呆れた。びっくりしないの? 贈り主は、その坊やなのよ」
良子はサイド・テーブルに花束を置いた。
「きっと旦那ね。わざと坊やの名前で」と、真弓はいった。「固物の老舗の息子にしちゃ、やるじゃない? なかなか」
良子は、ゆっくりと身を起した。どうしてこの花束にまったくの感興も湧かないのだろう。それが、自分でも不思議だった。
花束の贈り主は、良子自身だった。――彼女は、あの海岸の公園で夫との別居を決心した直後、一人でホテルの隣りの小さな花屋へ行き、真弓のアパートの番地をいい、市外輸送の料金まで前払いをして、自分宛てにクリスマスにここに届けるよう依頼したのだった。……でも、なぜ私はこんなことをしたのだろう。
真弓が鼻歌をうたいながらバスを使っている。そののんびりしたハミングを聞くともなしに聞いて、良子はベッドに坐ったまま、ぼんやりと窓の外の明るく晴れた空を見ていた。
自分は、こうして、すこしでも弘の記憶をなまなましくしなくては、なんのプレゼントもない私のこのクリスマスがどんなに空虚で悲しいだろうという予想で、海に化した弘の身代りになり自分にこの花束を贈ったのだ、と良子は思ってみた。