Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
遠目には違いないが、うなだれたあの若い女が、しょんぼりと靴先でくりかえし道に線を引いていた姿が、彼の目に灼きついたように残っていた。
彼はまた便所に入った。女は、靴先での遊びをやめ、首をまげこちらの道を見ていた。大きな欠伸をした。
一時間後、たまらなくなって彼はまた便所からのぞいた。女は、ぐずぐずと迷うようにあたりを眺めながら、こんどは小刻みに小さな環を描いて、未練げに道の同じ場所をゆっくりと廻っていた。
曇った冬の空が低く、ひどく底冷えのする日だった。炊事場のながしも薄く凍っている。女は、さぞ寒いだろう。さぞつらいだろう。――
我慢できないような気分で、彼は下宿を出た。せわしなく四辻へとあるいた。女の姿が見えない。が、彼がやっと四辻まで来たとき、ちょうどそこに女が歩いてきた。彼は諒解した。女の歩いてきた方角には、公衆便所のある小公園があるのだ。
ちらりと彼を見て顔をそむけ、女は、それまでと同じ場所で立ち止った。石像のような姿勢で、話しかけるなんのキッカケもなかった。彼は、煙草屋に顔を向けた。
……空しく机の上にふえた『憩』の箱を眺めながら、彼は大きく呼吸を吐いた。