Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
とてもしつっこいの。あなた、もう何時間も立ってますね、なんて。きっと、ずっと見ていたのね。ずいぶん暇な人だわ。バカな男」
「違う。……違う」呻くように、彼はくりかえした。彼は、今日のあの女を、十二時間も同じ場所にいたあの娘のことを思っていた。
なるほど、妻はそのようにして同じくらいの時間をつぶしてきたのかもしれない。――しかし、あの娘は違う。あの娘だけは違う。絶対にそうじゃあない。あの娘は、「愛」のために今日一日をあそこに立っていたのだ。
「違わないわ、ほんとよ」
妻は、急に声を大きくした。
「あら、あなた、今日はずいぶん煙草を買ったのねえ。『憩』が五つもあるわ。……わかった、パチンコ屋であそんでたのね?」
黙ったまま、彼は妻の膝に手をのばした。妻は自分から抱かれてきた。その頬がひどく冷たいのに、妻は焦れるように、すぐに喘ぐ呼吸になった。突然、彼はその妻への愛、三年まえ、はじめて唇を吸いあった日の傷口のような記憶が、するどく胸をつらぬくのを感じとった。それは、遠い、遥かな、しかし今日、彼が感じつづけていたそれと同じ疼きだった。それを、彼は思い出した。
道を、自動車の爆音が走り過ぎる。