Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
のかたちであらわれる一種の羞恥には、ぼくはまるで縁がなかった。――他人のことは他人のこと、腹がへれば躊躇なく芋俵に突進する。他人の目や腹や正義や幸福にはおかまいなく、ただ自分の関心事だけに忠実に行動すること。そういうあくまでも「個」としての自分への率直さは、混乱した当時の社会の中で、十五歳のぼくがぼくなりに獲得したただ一つの倫理だった。
部屋には、きっとさまざまの病気の黴菌がみちていたことだろう。だが、色の青白い、まるでそれが仕事みたいにいつも咳こんでばかりいるそんな同僚たちの中で、老人のようにぼくも背をまるめて、一日じゅう手当りしだいに新聞や雑誌の活字をくりかえし舐めるように読んだり眺めたり、また日独米英の飛行機の絵をいたずら書きしたりして日を送った。そのほかに時間のつぶしようがなかったのだ。ただ一人の級は別だが同学年生の山口を、だからぼくは話相手にしようと思った。
山口は、色白で顔が小さく、背丈と四肢ばかりがチグハグにひょろひょろとのびかかって、少年期から青年期への、あの不安定でヒレのつかない成長の過程にいた。それはたぶんぼくも同じだった。が、彼はひどく神経質で、無口で、可愛い兎のような顔のくせに、おそろしく不愛想なのであった。