Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
リーグ戦が、あと三ゲームほど残っていたのだった。
一月の中旬が過ぎるころ、あと残された試合はワセダとの決勝戦だけになった。双方とも勝点四ずつをあげ、ことにケイオーは、この試合に連勝すればかがやかしい無敗の完全優勝の「壮挙」になる。
よく晴れた午後であった。その日の慶早両軍のそれぞれの秘策を練るのに夢中なまま、ぼくが弁当の風呂敷包みとボールとを持ち階段を駈けあがると、屋上の金網に幽霊のような姿勢で両手の指を突っこみ、じっと広尾方面の焼跡を見下ろしている一人の先客の背が目にはいった。山口であった。ご機嫌で自分が「若き血」の口笛を吹いていたことに、ぼくは秘事をあばかれた羞恥を平手打ちのように頬にかんじて、口をとがらせて立ち止った。
不愉快ははなはだしかった。が、いまさら階下へ降り、同僚の不健康で有毒な口臭や、無気力でしみったれた笑い声や空咳、「年ごろ」の会話をぎこちなくこねまわしている暗い物置のような詰所で、同じようなくすんだ仏頂面をならべて黙りこくる気分には、とうていもどりたくなかった。ボールをポケットにねじこみ、ぼくは中断した応援歌の口笛をふたたびわざと高らかに吹き鳴らして、屋上の中央へと歩きだした。