Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme

Aozora Bunko

やめるわ」

「まるで、君には弘がすべてみたいだ」男は笑顔をつくった。「でも良子、君はもともとこのぼくの妻なんだぜ。……弘の、母である前にさ」

女は立上がった。岸壁のほうに歩いた。

男が呼んでいるようだ。逆風で、よく聞きとれない。が、女は振り向かない。藍色の海は、かすかに沖が靄っている。

海は動いている。きっともう、弘は海に溶けてしまっている。浪にさらわれてもう一月。たった満四歳の幼い小さなからだ。私たち、なぜ九月に海岸になんか行ったんだろう。

「――弘」

と女は呟く。シーズン中だったら、多勢のうちのだれかが早く気がついたわ。あんな大きな浪だって来ず、私が海に駆けこむのを、だれも力ずくで止めはしなかったわ。

私が悪いの。私たちが悪いんだわ。ママとパパの不注意があなたを殺したのよ、弘。

また男が呼ぶ。夫は、きっと心配しているのだ。

――夫。夫なの? あの男が? あれは、まるで他人。一人の、見知らない男。

突然、海が絶叫する。なまなましい轟音。それが女を包む。

女は、海に自分を見る。その自分にいう。

海が奪ったのよ、弘を。弘は、そして海と一つになってしまったのよ。