Japanische Klassiker mit Furigana
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なつめせんせいのついおく
夏目先生の追憶
和辻 哲郎
Lesen Sie 夏目先生の追憶 (なつめせんせいのついおく) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.272 Zeichen · 21 Bildschirme
愛において絶対の融合を欲しながら、それを不可能にする種々な心の影に対してあまりに眼の届き過ぎる人である。そのため先生の平生にはなるべく感動を超越しようとする努力があった。先生は相手の心の純不純をかなり鋭く直覚する。そうして相手の心を細かい隅々にわたって感得する。先生の心臓は活発にそれに反応するが、しかし先生はそれだけを露骨に発表することを好まなかった。先生は親切を陰でする、そうして顔を合わせた時にその親切について言及せられることを欲しない。先生にとっては、最も重大なことはただ黙々の内に、瞳と瞳との一瞬の交叉の内に通ぜらるべきであった。従って先生は対話の場合かなり無遠慮に露骨に突っ込んで来るにかかわらず、問題が自分なり相手なりの深みに触れて来ると、すぐに言葉を転じてしまう。そうして手ざわりのいい諧謔をもって柔らかくその問題を包む(もちろん心の問題でもそれが個人的関係に即してではなく一つの人生観、思想問題としてならば、先生は底までも突っ込んで行くことを辞せなかった)。これらの所に先生の温情と厭世観との結合した現われがあったようである。
右のような先生の傾向のために、諧謔は先生の感情表現の方法として欠くべからざるものであった。