Japanische Klassiker mit Furigana
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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
Lesen Sie 夏草戦記 (なつくさせんき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.107 Zeichen · 41 Bildschirme
……誰だったろう、十六か七の年ごろで、自分を追って来るような娘、……なんだかすぐその顔が思いうかびそうだった、故郷の者かしらん、それともかみがたの者かしらん、たしかにそういう娘がいそうに思えるのだが、そしてその声音まで聞えそうなのだが、しかしつきつめて考えると故郷にもかみがたにも、こんな山峡の奥まで自分を追って来るような娘はいる筈がなかった。かれはそっと頭を振りながら、若さというものはこんな些細な話にもつまらぬ空想をはたらかせるものだと思って苦笑した。そこへ「涼しい晩だな」と云いながら戸田源七があゆみ寄って来た、かれは新九郎と並んで藁束の上へ仰向きに寝ころび、両手を頭の下に敷いてふかく息をついた。
美しく澄みとおった星空が手の届きそうなほどにも低くみえる、薄い綿雲が二つ三つながれているばかりで、きらきらと耀く群星をさえぎるものもない。源七は投げ出した足をだるそうに組み直しながら「このあいだのは思い違いだった」と囁いた、それから声を高くして「こうしていると故郷を思いだすなあ」と云った。するとまるでそれに答えるもののように、少しはなれたところからさんざ時雨をうたいだす者があった。