Japanische Klassiker mit Furigana
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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
Lesen Sie 夏草戦記 (なつくさせんき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.107 Zeichen · 41 Bildschirme
しかし時刻はまだそれほどおそくはなかった。かなり更けたと思われるのに、谷あいの下のほうで十時を打つ寺の鐘がきこえて来た、そしてその余韻がしずかに尾をひいて消えてしまうと、村長の家からそっと部将が出てきた、うしろには残った副将のひとりが、がんどう提燈を持ってついていた。
「今日はえらかったとみえてみんなよく眠っているな」あちらに一団こちらに一団とぐっすり眠っている兵たちを見まわりながら、部将は低いこえでそう呟いた。
「あの峠で精をだしきりました」副将はときどきがんどう提燈で寝ている兵たちを照しだした。
「荷駄がどうかと案じましたが、今日の峠越えがあれで済めばあとは大丈夫でしょう」
部将はひどい蚊だなと云いつつ、木下闇の道を拾うようにして、部落の東の端のほうまで出ていった。立番の哨戒はきびしく守られていた、かれらは二人が近づいてゆくと、樹蔭の闇からするどく誰何した、闇のなかで、持っている銃の火繩がちらちらと動いた。部将はその一人ひとりに労いの言葉をかけた、
「眠いのにご苦労だな、知ってのとおりわれわれは覘われている、立番の役は全隊士の命を預かっているのも同様だ、掟を忘れずしっかり守ってくれ」